科学と人間生活 生物・光分野 合格のレシピ

生物と光

生物分野「光と生物」では、植物の生育(光合成など)、動物の行動(光走性など)とヒトの視覚と光のかかわり(眼の構造など)などを学ぶ。

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光合成によってつくられる有機物

植物は、成長や繁殖に必要な有機物を自らつくりだすことができる。そのしくみが「光合成」である。植物に太陽光が必要なのは、主に光合成をするためである。光合成では、光エネルギーを利用し、根から吸収した「水」と気孔を通して吸収した「二酸化炭素」から「有機物」をつくりだす。光合成によってつくられた有機物は、やがて「師管」を通って他の部分に移動していく。

※光合成により酸素が発生するが、気孔から大気中に出て行く。

光をキャッチするのは光合成色素

太陽光(白色光)は虹色の光(さまざまな色の光)の集まりであり、植物はその光を効率良くキャッチし、吸収している。光をキャッチするのは葉緑体の中にある「光合成色素」とよばれる物質である。

植物の葉を取り、ペーパークロマトグラフィー法で光合成色素を調べる実験ををすると、次のような色素が含まれていることがわかる。

  • クロロフィルa
  • クロロフィルb
  • カロテン
  • キサントフィル

それぞれの光合成色素は、虹色の光を分担するかのように吸収している。たとえば、クロロフィルaは、紫、青、赤色の光を吸収する。

光合成曲線

植物がどのくらい光合成を行っているかは、二酸化炭素(CO2)の吸収速度で測定する。植物は、暗黒状態では呼吸のみを行い二酸化炭素(CO2)を「放出」する。そのため、下のグラフを見ると、光の強さがゼロのときは、二酸化炭素の放出量はマイナスである。植物にあてる光を徐々に強くしていくと、光合成による二酸化炭素の「吸収」が増えていくが、光を強くすればするほど、光合成量が多くなるわけではない。その状況をグラフにしたのが「光合成曲線」である。

※光合成曲線の縦軸は二酸化炭素吸収「速度」であるが、ピンとこない場合は二酸化炭素吸収「量」と置き換えて考えるとイメージしやすいかも知れない。また、二酸化炭素の吸収量が大きいほど光合成も盛んに行われているとみなすため、縦軸は「光合成速度(光合成量)」と読み換えることができる。

光合成曲線 title=

 

 名称意味
P光補償点光合成によるCO2の吸収速度と、呼吸による二酸化炭素の放出速度が、見かけ上等しくなる点
Q光飽和点CO2吸収速度が光の強さが増すにつれて大きくなり、これ以上光の強さを増してもCO2吸収速度が増えなくなる光の量を表す点
X見かけの光合成速度Z-Y
Y呼吸速度呼吸によるCO2吸収速度
Z光合成速度光合成による実際のCO2吸収速度

ヒトの眼の構造の断面模式図

人の眼に光線がはいる入口がは「瞳孔」とよばれる。瞳孔は「虹彩(こうさい)」のはたらきにより、明るい所では小さくなり、暗い所では大きくなる。また、毛様体(毛様筋)は、水晶体(レンズ)の厚さを変化させピント合わせを行い、網膜上に像を結ばせる。

ヒトの眼の構造の断面模式図 title=

明順応

網膜のほぼ全体には、光を感じるはたらきを持つ「(かんたい)細胞」ある。暗い所から急に明るい所に出ると最初はまぶしいが、やがて体細胞の感度が低下し、ふつうに見えるようになる。このような眼のはたらきを「明順応」という。

光に対する動物の行動

動物の活動リズムは、外界からの光によって調節される。例えば、暗くなると、蛾などの昆虫は光に反応して、街灯などに向かって飛んでくる。アルテミアの幼生は光に反応して集まる。ミミズは光を当てると、すぐに光から逃げるように、土の中にもぐり始める。このような生物の性質を「光走性」という。

ホタルの雌と雄は、発光器官を点滅させて交信している。ホタルは種類ごとに発光パターンが決まっているので、互いに同じ種類の雌雄を見分けて生殖行動を行うことができる。

植物と光

日長によって花芽の形成を調節する植物もある。このような植物は、明期よりも連続した暗期が深く関係している。

植物が、光刺激に対して一定の方向へ曲がる性質を「光屈性」という。この光刺激を受けた方向に向かって曲がることを「正の光屈性」といい、光刺激と反対方向に曲がることを「負の光屈性」という。

人間と光

私たち人間の健康に貢献しているビタミンDは、食事からも摂取できるが、日光浴で光(紫外線)をあびると、体内にビタミンDがつくられる。また、光は生活のリズムを一定に保つ体内時計に対しても、大切な役割を果たしている。眼から入る昼夜の明暗の変化に応じて、体内時計は絶えず補正されている。


〔参考文献等〕
第一学習社「高等学校 科学と人間生活」/NHK「高校講座 科学と人間生活」/高等学校卒業程度認定試験