例題で学ぶ「一票の格差」

選挙のたびに報道される「1票の格差」とは、何なのでしょうか。

簡単な例題を読みながら学んでみましょう。

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例題 - 多数決で修学旅行の行き先を決める

ある高校の3年生のクラス構成は次のとおりです。

  • Aクラス(進学科40名)
  • Bクラス(音楽科10名)
  • Cクラス(体育科10名)

修学旅行の行き先は、毎年、生徒の意見で決められます。
生徒の意見をクラス別にみると次のとおりでした。

北海道派沖縄派
Aクラス(進学科:40人)535
Bクラス(音楽科:10人)73
Cクラス(体育科:10人)82

今年は、学年全体で、北海道と沖縄の大きく2つに意見が分かれてしまいました。

そこで、クラスごとに多数決で代表者を一人ずつ選び、代表者3人が代表者ミーティングで議論して決めることになりました。

※ここでは「一票の格差」の説明のために、(学年全体で多数決するのではなく)あえて各クラスから代表者1名を選んで行き先を決定する方式にしています。それは各選挙区から1名の代表者を選ぶという選挙制度(小選挙区制)に対応させるためです。

多数決の原則で決めていくと、代表者ミーティングでは、北海道と沖縄のどちらに決まるのか考えてみましょう。

以下の文中の【 】に適切な言葉や数をあてはめながら、読み進めてください。すでに、言葉が入っている場合は、どちらか一方を選んでください。

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代表者選び

まず、各クラスの代表者1名を多数決(選挙)で決めます。

それぞれの生徒は自分と同じ意見(修学旅行の行き先)を持つ代表者に投票するので、次の通りになります。

※北海道派と沖縄派の人数は上表と同じです。

北海道派沖縄派代表者(多数決で一人決める)
Aクラス(40人)535→沖縄派の代表者1人が選ばれる
Bクラス(10人)73→北海道派の代表者1人が選ばれる
Cクラス(10人)82【 】派の代表者1人が選ばれる
正解=北海道
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代表者ミーティング

各クラスの代表者1名ずつで行う代表者ミーティングの結果はどうなるでしょうか。

沖縄派の代表者が1人、北海道派の代表者が【 】人なので、多数決になれば、【 】に決まります。

正解=2(人)、北海道

ところで、学年全体で見た場合、北海道派と沖縄派の内訳と合計人数は次のとおりです。

↓最初の表の最下段に合計を加えたもの
北海道派沖縄派
Aクラス(40人)535
Bクラス(10人)73
Cクラス(10人)82
合計2040

学年全体で考えれば、沖縄派が40人、北海道派が20人なのに、代表者による代表者ミーティングでは、少数派の【 】に決まってしまったのです。

各クラスから代表者を1人選び、代表者のミーティングで決めるというしくみは、このような問題が潜在しているのです。

このことは、各選挙区から1名の代表者を選び、国会で決めるというしくみと同じことです。

正解=北海道
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問題の原因

Aクラスと他のクラスとでは、【 】の差が大きいために、このような問題が起きてしまったのです。

正解=人数(または「生徒数」)

つまり、BクラスとCクラスはAクラスと比べて生徒数の少ないのですが、多数決で代表者を選んだために、生徒一人あたりの意見の重さはAクラスよりも、BクラスやCクラスの方が【重かった・軽かった】という結果が起こってしまったのです。

言い換えれば、所属しているクラスにより、生徒一人あたりの意見の重さに差が出てしまったということです。

正解=重かった
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「1票の格差」もこれと同じ

上記の例題(修学旅行の行き先を決める代表者ミーティング)と(規模は違いますが)同等の問題が、選挙のたびに問題視される「1票の格差」です。選挙もいわば「多数決」です。

衆議院選挙の小選挙区制の選挙制度では、クラスから代表者を1人選ぶのと同じように、全国の各選挙区から1名ずつ代表者(=国会議員)を選びます。

地方と都市部では、どうしても人口に差があります。つまり、住んでいる地域により、一票の重み(住民の意見の重さ)が変わってしまうのです。

これが「1票の格差」です。

「1票の格差」が大きいと、上記の修学旅行の行き先の例のように、人口の少ない地方部の人たちの意見が取り入れやすい傾向になってしまいます。

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一票の格差で生じる選挙の不公平さ

一票の格差は選挙自体にも不公平さが生じ、しばしば選挙の無効などが指摘されています。以下、説明のため、現実よりも有権者数(=選挙権を持っている人、選挙で投票できる人)を少なくしています。

例えば、りんご選挙区では、50人の有権者がいて、すいか選挙区では25人の有権者がいたとします。そして、選挙をしたら結果は次のようになりました。

選挙結果を見ると不公平が生じています。

りんご選挙区すいか選挙区
有権者数50人25人
議員定数※小選挙区制なので1人1人1人
候補者3名(A・B・C)2名(E・F)
得票数と結果A:25票で当選
B:20票で落選
C:5票で落選
E:15票で当選
F:10票で落選

りんご選挙区では、当選に25票必要であったものが、すいか選挙区では15票で当選しています。

つまり、りんご選挙区の候補者Bは、20票で落選しているのに、すいか選挙区では候補者Eが15票で当選しています。

「一票の格差」により、このような不公平な問題も起きてしまうのです。

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1票の格差は倍率で表現される

一票の格差は、通常は「一票の格差が○倍」などのように表現されます。

りんご選挙区とすいか選挙区とで、議員一人に対する1票の価値を表現すると、有権者が50人のりんご選挙区では、1/50(50分の1)、有権者が25人のすいか選挙区では、1/25(25分の1)になります。有権者の少ないすいか選挙区の方が一票の価値が大きくなっています。

実際の選挙における「1票の格差」は数値で表し、「1票の格差○倍」などと表現します。上記の例では、すいか選挙区とりんご選挙区では、有権者の1票に「2倍の格差がある」と表現します。

りんご選挙区すいか選挙区
議員一人に対する1票の価値1/501/25

※一票の価値は分数で表現されるため、数学が苦手な方は戸惑うかもしれませんが、分数は分母が大きいほど、その分数全体は小さくなります。1/50と1/25とでは、1/50の方が小さくなります。数学的に計算すると、1/50を2倍すると1/25になります。

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確認問題(高認予想問題)

1票の格差とは、選挙区により、有権者の1票の重みに不平等が生じることを指すが、これどういうことか。次のア〜エのうちから、最も適切なものを一つ選べ。

  1. 有権者が多い選挙区ほど1票の価値は小さくなり、逆に有権者が少ないほど価値は大きくなる。
  2. 有権者が多い選挙区ほど1票の価値は大きくなり、逆に有権者が少ないほど価値は小さくなる。
  3. 投票率が高い選挙区ほど1票の価値は小さくなり、逆に投票率が低いほど価値は大きくなる。
  4. 投票率が高い選挙区ほど1票の価値は大きくなり、逆に投票率が低いほど価値は小さくなる。

正解=ア

一票の格差とは有権者一人当たりの一票の価値が選挙区ごとに格差が生じてしまうことです。民主主義のもとでは、原則として有権者一人当たりの一票の価値は平等であるべきです。しかし、一票の格差があまりに大きいと日本国憲法(第14条)で定められている「法の下の平等」に抵触するため、改善することが求められています。

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