大学入試共通テスト

2021年/令和3年から、思考力・判断力・表現力を一層重視する「大学入学共通テスト/共通テスト」が実施されます。

大学入試センター試験(センター試験)に代わって、2021年/令和3年からは、思考力・判断力・表現力を一層重視する「大学入学共通テスト(共通テスト)」が実施されます。これは変化する社会に対応できる能力の育成、評価を行うべく、大学入試においては多面的・総合的に能力を評価するという趣旨が根底にあります。

大学入試共通テスト

大学入試共通テストとは
大学入学共通テスト(略称「共通テスト」)は、大学入学希望者を対象に、高等学校段階(大学入学段階)における基礎的な学習の達成の程度を判定し、大学教育を受けるために必要な能力(主に、思考力・判断力・表現力)について把握することを目的とするテストで、平成2年(1990年)から実施されてきた大学入試センター試験に代わって、令和3年(2021年)から実施されます。


大学入学試験(共通一次~共通テスト)の沿革

1979年に共通一次試験が始まってから今年で45年が経ちました。当初は国公立大学の一次試験として位置づけられていました。その後、元号の変遷とともに、試験の名称も変わり、令和3年度からは「大学入学共通テスト」として実施され、問われる内容も知識中心ではなく、時代的な要請(社会環境の変化)に応えるべく、思考力・判断力・表現力が重視される試験内容に変わります。

試験名実施年
大学共通第一次学力試験
(共通一次試験)
1979年~1989年の11年間
(昭和54年~平成元年)
大学入試センター試験
(センター試験)
1990年~2020年の31年間
(平成2年~令和2年)
大学入学共通テスト
(共通テスト)
2021年~(令和3年~)

※共通一次試験の正式名称は「国公立大学入試選抜共通第一次学力試験」


センター試験と共通テストの違い

共通テストでは「知識・技能」のみでなく、高校卒業段階(大学入学段階)で求められる「思考力・判断力・表現力」を一層重視するという趣旨が根底にあります。その一環として、国語と数学①で記述式問題が採用され、理科②の選択問題がなくなります。また英語においても下表のとおり、定番問題に変更があります。

 センター試験共通テスト
解答方式(※1)マークシート方式マークシート方式と記述式
国語の試験時間80分100分
数学①の試験時間60分70分
理科②の選択問題ありなし
英語の配点筆記200点
リスニング50点
リーディング100点
リスニング100点
英語の定番問題発音、アクセント、語句整序などを単独で問う問題を出題発音、アクセント、語句整序などを単独で問う問題の出題はない

※1:共通テスト実施初年度(2021年1月実施)からは、国語、数学①で記述式が導入され、2024年度(2025年1月実施)から地理歴史や公民、理科においても導入されます。

※共通テストの英語は、将来的には民間の英語資格・検定試験に置き換わる予定となっています。これは、グローバル化が急速に進展する中、英語によるコミュニケーション能力の向上が課題となっており、4技能(読む・聞く・書く・話す)を評価する必要があると考えられているからです。すでに4技能評価を行っている民間の英語資格・検定試験を活用することが適切であるという判断のもと、2021年度入試からは「大学入試英語成績提供システム」が稼働します。受験生は、高校3年生以降の4~12月に受験した最大2回までの成績を登録することができるようになり、大学入試で活用できるようになります。


実施期日

大学入学共通テストの実施は、1月中旬の土日の2日間で行われます(従来の大学入試センター試験と同様)。なお、共通テストの初回の実施は令和3年1月16日(土)・17日(日)です。


出題教科と科目

大学入学共通テスト実施初年度(令和2年度/令和3年1月実施)の試験科目は、従来のセンター試験と同様に6教科30科目です。各教科内の科目の選択方法もセンター試験と同様です。
なお、各教科で選択する科目については、出願時に申請する必要があります。

教科科目選択方法解答方法解答時間配点
国語国語マーク式
及び
記述式
100分マーク式
= 200点 
記述式
= 段階表示
地理
歴史
「世界史A」「世界史B」
「日本史A」「日本史B」
「地理A」「地理B」
地理歴史、公民の合計10科目のうちから最大2科目選択。
※但し、同一名称を含む科目の組合せ不可
マーク式1科目
60分
1科目
100点
公民「現代社会」
「倫理」「政治・経済」
「倫理、政治・経済」
マーク式1科目
60分
1科目
100点
数学「数学Ⅰ」
「数学Ⅰ・数学A」
1科目選択マーク式
及び
記述式
70分100点
※記述式問題を含む
数学「数学Ⅱ」
「数学Ⅱ・数学B」
「簿記・会計」
「情報関係基礎」
1科目選択 マーク式60分100点
理科「物理基礎」
「化学基礎」
「生物基礎」
「地学基礎」
下記のいずれかの選択方法により科目を選択
A:理科①から2科目
B:理科②から1科目
C:理科①から2科目及び理科②から1科目
D:理科②から2科目
マーク式2科目で
60分
2科目で
100点
理科「物理」「化学」
「生物」「地学」
マーク式1科目
60分
1科目
100点
外国語「英語」
「ドイツ語」
「フランス語」
「中国語」
「韓国語」
1科目を選択マーク式英語のリーディング:80分
英語のリスニング:30分
その他の言語:80分
英語のリーディング:100点
英語のリスニング100点
その他の言語:200点

※地理歴史及び公民で「同一名称を含む科目の組合せ」とは、「世界史A」と「世界史B」、「日本史A」と「日本史B」、「地理A」と「地理B」、「倫理」と『倫理、政治・経済』及び「政治・経済」と『倫理、政治・経済』の組合せをいいます。

※地理歴史及び公民並びに理科②の試験時間において2科目を選択する場合は、解答順に第1解答科目及び第2解答科目に区分し各60分間で解答を行いますが、第1解答科目及び第2解答科目の間に答案回収等を行うために10分間の時間を設定しています。

※理科①については、1科目のみの受験は認められていません。

※外国語において「英語」を選択する受験者は、原則として、リーディングとリスニングの双方を解答します。

※リスニングは、音声問題を用い30分間で解答を行いますが、解答開始前に受験者に配付したICプレーヤーの作動確認・音量調節を受験者本人が行うために30分の時間をとっています。


出題の方針と評価

各教科・科目の知識・技能が問われる問題の他に、共通テストでは、特に思考力・判断力・表現力を重視した問題が出題されます。そのため、特に国語と数学については、従来のマークシート式問題に加え、記述式問題も出題されます。

また、大学入試センターによると、マーク式問題でも、次のような新たな出題形式の問題も出題されることが発表されています。

(1)選択肢の中から正しいものをすべて選ぶ問題

(2)一つ前で答えた内容と合わせて次の問題を解答させるような連動型問題(正解が複数ある)

(1)については、例えば物理の問題で、ブランコが振れる周期を短くするにはどのようにすればよいのかを、正解を複数含む選択肢から正しいものをすべて選ぶような問題です。

新しいタイプの問題例(物理)

新しいタイプの問題例(物理)|出典:共通テストプレテスト

(2)については、例えば日本史の問題で、まず、江戸幕府が滅亡へ向かうようになった出来事(きっかけ/ターニングポイント)を1つ選び(←どれを選んでも正解扱い)、次の問題でその理由(幕府が滅亡に向かった理由)を選択肢から選ぶような組み合わせ問題です。

新しいタイプの問題例(日本史)

新しいタイプの問題例(日本史)|出典:共通テストプレテスト

(1)のタイプは、過不足なくマークしている場合に正解となるので、通常より難しい問題となる可能性があります。一方、(2)のタイプは、最初の問題で、自分がよく知っている出来事(よく学んでいる出来事)を答え、その事件の歴史的な意義を解答するので、受験者にとっては正解しやすい問題になることが推察されます。ただし、問いが連動するので(2問で1つの問い扱いになるので)、不正解になると失われる点数が大きくなる可能性も考えられます。

※物理の問題の正解=1,3/日本史の問題の正解=1を選んだ場合は4、2を選んだ場合は2


大学へ提供される成績情報

共通テストは、全国のほぼすべての大学が共同して実施するため、大学入試センターが問題の作成し、採点処理を行います。採点結果等の成績情報は、2月上旬頃までに、大学に提供され、その後、各大学で、その結果を活用した入試(共通テスト利用入試)が行われます。

なお、大学へ提供される成績情報は、得点情報のほか、新たに、得点に対する9段階の段階評価が提供されます。この段階評価は、受験者の得点分布から算出されるため、科目により異なります。

センター試験から共通テストへ変わる理由

今に生きる私たちの社会は、かつての変化とは比較できない速さで目まぐるしく変化しています。グローバル化の進展や人工知能技術をはじめとする技術革新、情報化社会の進展などに伴い、先を見通すことは大変難しくなっています。今の高校生が社会に出る数年後には、社会が大きく変化していることが予想されます。

そんな社会を生き抜いていくためには、変化に対応できる資質・能力の育成が必要であり、「学力の3要素」とされている(① 知識・技能 ② 思考力・判断力・表現力 ③ 主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度)を育成・評価することが重要です。そのため、高校教育と大学教育、その両者を接続する大学入学試験を三位一体として改革し、それぞれの在り方を転換していくことが社会的な課題となっています。

文部科学省では、変化の激しい時代において、新たな価値を創造していく力を育成するために、高大接続改革(高校から大学への接続改革)を進めており、その一環として、大学入試センター試験(センター試験)から、思考力・判断力・表現力を一層重視する「大学入学共通テスト(共通テスト)」への転換が行われます。


〔参考・引用〕
文部科学省「高大接続改革」/独立行政法人 大学入試センター 大学入学共通テスト 試行調査/河合塾「Kei-Net」/wikipedia