一次不等式の文章題(どちらが得か編)

身近な問題を不等式によって解く方法を考えます。日常生活にありがちな「どういう方法で買うと得するか」というような問題です。高卒認定試験の数学は、身近な生活を題材とした出題が多くみられます。数学的な考え方を日常生活に応用できる力を養うことが高校の学習指導要領で謳われているからです。高卒認定試験では基本問題が多いので、日常で使う計算のセンスでも解ける問題もありますが、学習指導要領を踏まえて不等式を使って解いてみます。

問題文を正確に読み取って、不等号の向きに気をつけて、式を作ることが肝心です。そして解を出したら、その解の意味を正しく読み取って解答します。

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まずは日本語の不等式にしよう!

例題

★★★☆☆

ある店では入会金700円を払って会員になると、1個500円の商品を40円引きで買うことができる。この商品を買うとき、
少なくともイウ個以上買うと、入会して買った方が、入会しないで買うよりも安くなる。

出典:高等学校卒業程度認定試験 数学
  1. まず、目標(=解答すべきもの)を確かめます。
    問題文に「少なくともイウ個以上買うと…」とあるので、目標は、買う商品の個数です。これをχ(個)とします。
  2. 次に、問題文の条件を日本語の不等式にします。
    「入会して買った方が、入会しないで買うよりも安くなる」とあるので、
    (入会して買う)(入会しないで買う)
  3. 次に数式を使って、不等式を作ります。
    入会して買った場合の料金は(入会金)+(商品代金)であり、商品代金が40円引きで460円になることに注意すると、
    700 + 460χ となります。
    入会しない場合は、値引きなしの商品代金のみなので、
    500χ となります。
    ゆえに、不等式は
    700 + 460χ < 500χ です。
  4. 不等式を計算すると、
         700 + 460χ < 500χ
              700 < 500χ - 460χ
              700 < 40χ
            700/40 < χ
             17.5 < χ
  5. 解が出たので、その意味を考えて、解答します。
    この不等式の解を日本語にすると
    χ17.5…より大きい。」
    です。χは商品の個数なので、自然数で考えると、
    18、19、20、21、22 … です。
    この中で最小の個数は18です。
正解:18(イウ=18)
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問題を自力で解いてみよう!

高卒認定の過去問題です。ぜひ、鉛筆を持って、紙に書いて、不等式を立てて、自力で解いてみてください。わからない場合は図式化して考えます。解説と正解は問題下の「正解はこちら」をタップまたはクリックすると表示されます。

問題1

★★☆☆☆

遊園地で1日5000円のフリーパス券を買う方法と、入場料1000円を払い、1回ごとに乗り物券350円を買う方法がある。フリーパス券の方が安くなるのは、
最低イウ回以上乗ったときである。ただし、フリーパス券には入場料も含まれるものとする。

出典:高等学校卒業程度認定試験 数学
▼正解はこちら

数学が苦手な人は、無理に方程式や不等式を立てて解こうとしなくても、問題文を正しく理解して、日常生活で使う計算感覚で考えてた方がわかりやすいと思います。具体例で考えてみます。

例えば、1回だけ乗り物に乗った場合は、1000円の入場料と、乗り物券代350円で合計1350円で済むので、フリーパスを買わない方がかなり安いです。

では、10回乗った場合はどうでしょうか。乗り物券代は3500円になります。入場料と合わせて4500円なので、フリーパス券の5000円にだいぶ近づきました。

11回乗る場合は、さらに350円プラスで、4850円

12回乗ると、さらに350円がプラスされるので、5000円を超えます。

ゆえに、乗り物に12回以上乗るなら、フリーパス券を買った方が安くなります。

正解は、12回です。


では、数学的に不等式を使って解く場合はどうなるでしょうか。

  1. まずは、目標(=解答すべきもの)を確認します。問題文をみると、「…最低イウ回以上乗ったときである。」とあるので、乗り物に乗る回数が目標です。これをχとします。
  2. 次の問題文の条件を日本語の不等式にします。
    「フリーパス券」を買う方法と「入場料+毎回乗り物券」を買う方法の2つがあり、「フリーパス券の方が安くなるのは、…」と問題文にあるので、不等式は
    (フリーパス券)(入場料+毎回乗り物券)
  3. 次に数式で不等式をつくります。
    フリーパス券は5000円です。
    入場料は1000円で、乗り物は1回350円でχ回乗ると、350χ円かかります。ゆえに、不等式は
    5000 1000 + 350χ
  4. 不等式を計算します。
        5000 < 1000 + 350χ
    5000 - 1000 < 350χ
        4000 < 350χ
      4000/350 < χ
       11.4… < χ
  5. 解が出たので、計算結果の意味を考えて、正解を出します。
    11.4… < χ と出ました。
    日本語にすると「χ は 11.4 よりも大きい。」
    χは乗り物に乗る回数なので、自然数です。
    自然数で考えるとχは、12,13,14,15,16 …
    問題文を見ると「最低イウ回以上乗ったとき…」となっています。
    最低のχ(自然数)は 12 です。
正解:12(イウ=12)

問題2

★★☆☆☆

あるバス会社の1日乗車券は1600円である。また、バスの乗車1回ごとに料金を支払う場合は均一で260円である。同じ日に何回かバスに乗車する時、1日乗車券を買った方が、毎回バス料金を支払うより安くなる最小の乗車回数は回である。

出典:高等学校卒業程度認定試験 数学
▼正解はこちら

乗車回数をχとすると、

1日乗車券(1600円)< 乗車1回ごとに料金を支払う(260円×χ

     1600 < 260χ
   1600/260 < χ
     6.1… < χ

この不等式の解を日本語にすると「χは 6.1…より大きい。」
χは、最小の乗車回数(自然数)なので、7が正解。

正解:7(イ=7)

問題3

★★★☆☆

ある水族館の一般の入場料は一人当たり600円である。しかし、25人以上の団体は一人当たり500円で入場できる。25人に満たない団体でも、25人分の団体用の入場券を購入することで入場できる場合、
少なくともイウ人以上のときは、団体用の入場券を購入する方が入場料の総額が少ない。

出典:高等学校卒業程度認定試験 数学
▼正解はこちら

問題文の意味を理解することが、少々難しい問題です。問題文を言い換えると「25人分の入場券を買った方が得する人数は?」ということです。

25人分の団体用の入場券は、500×25=12500円。25人にはならないけど、12500円分の団体扱いで買ってしまう方が安くなる最小の人数を求める問題です。

問題文を正しく理解して、日本語の不等式にすると
(団体扱いで25人分買う)<(一人あたり600円で買う)
となります。

入場する人数をχとすると、

     12500 < 600χ
   12500/600 < χ
    20.8… < χ

この不等式の解を日本語にすると「χは 20.8…より大きい。」
χは、最小の人数(自然数)なので、21が正解です。

正解:21(イウ=21)

※不等号の向きに混乱したら … 問題文を見て「団体用の入場券を購入する方が入場料の総額が少ない。」となっていることに注意して、上の式の向きになります。
それでも、不等号の向きに混乱する場合は、方程式(=)で解いてみましょう。12500円になる人数を、方程式 12500 = 600χで解いて、問題文をあらためて読み直すと正解にたどり着けるでしょう。
つまり、χ=20.8… と出ます。これは12500円になる人数が、20.8人ということです。
団体用を利用しない場合、一人あたり600円なので、20人だと総額12000円ですが、21人だと12600円です。
団体用を利用した場合、最低25人分の12500円を支払う必要がある(20人でも12500円になる)ことを考えると、20人だと500円分損をして、21人だと100円得をすることになります。

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まとめ

解き方としては、問題文の条件を不等式で表して、解を求め、解の意味を正しく解釈して、正解を出すという流れになります。

  1. 目標(=解答するもの)を確認する
  2. 問題文の日本語を不等式にする
  3. 2を数式(不等式)にする
  4. 3の不等式を解く
  5. 不等式の解を解釈して、正解を出す

問題文を日本語として正しく読み取らないと、不等号の向きを間違えたり、正しく解が得られていても解答するときに間違ってしまいます。試験本番で混乱しないように、過去問題などでよく練習をしておくとよいでしょう。

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