一次不等式の文章題(Lv5:卒業問題)
今回は高卒認定試験の数学で出題された問題(不等式の文章題)の中で、一見難しいそうな問題を解いてみます。数学的な難しさというよりも問題文が多少複雑なため、日本語として正しく解釈するという意味で、難しく見える問題です。数学的な解き方の手順はこれまでと同じです。問題文を不等式にして、解を求め、その解を正しく解釈して、正解を出すという基本的な流れでOKです。
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一次不等式の卒業レベル問題の解説
例題
★★★★☆
長さが100mの1本のひもから、長さが5mと3mの2種類のひもを合わせて25本に切り分けるとき、5mのひもは最大カキ本まで切り分けることができる。ただし、ひもは余っても良いものとする。
出典:高等学校卒業程度認定試験 数学
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まず、目標(=解答すべきもの)を確かめます。
問題文に「5mのひもは最大カキ本まで…」とあるので、目標は、5mのひもの本数です。これをχ(本)とします。 -
合計で25本に切り分けるので、
5mのひもをχ(本)とすれば、
3mのひもは25-χ(本)になります。すると、
5mのひもの合計の長さは、5χ(m)
3mのひもの合計の長さは、3(25-χ)(m)
となります。そして、この合計が100m以下になります。 -
ここで、2を踏まえて、問題文の条件を不等式にしてみます。
(5mのひもの合計の長さ)+(3mのひもの合計の長さ)< 100m
5χ + 3(25-χ)< 100
5χ + 75-3χ< 100
5χ - 3χ< 100 - 75
2χ< 25
χ< 12.5
-
解が出たので、その意味を考えて、解答します。
この不等式の解を日本語にすると
「χは 12.5(本)より小さい。」
です。χはひもの本数なので、自然数で考えると、
12、11、10、 … です。
問題文を見ると、5mのひもの最大数を求めるので 12 本が正解です。
正解:12(イウ=12)
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自力で一次不等式の卒業問題を解いてみよう!
実戦問題
★★★★☆
硬貨を投げて表が出たら階段を4段登り、裏が出たら1段登るゲームをする。硬貨を10回投げて階段を30段以上登るためには、表は少なくともイ回以上出なければならない。
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まず、目標(=解答すべきもの)を確かめます。
問題文に「表は少なくともイ回以上出なければならない。」とあるので、目標は、硬貨を投げたときの「表の出る回数」です。「表の出る回数」をχ(回)とします。 -
合計で10回投げるので、
表の出る回数をχ(本)とすれば、
裏の出る回数は、10-χ(回)となります。
このとき階段を登る段数は、
表が出て登るのは、1回4段なので、合計4χ(段)
裏が出て登るのは、1回1段なので、合計1(10-χ)(段)
となります。そして、この合計が30段以上である必要があります。 -
ここで、2を踏まえて、問題文の条件を不等式にしてみます。
(表が出て登る段数)+(裏が出て登る段数)≧ 30
これを、数式(不等式)で表わして計算すると、
4χ + 1(10-χ)≧ 30
4χ + 10-χ≧ 30
4χ -χ≧ 30 - 10
3χ≧ 20
χ≧ 20/3
χ≧ 6.66…
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解が出たので、その意味を考えて、解答します。
この不等式の解を日本語にすると
「χは 6.6(回)より大きい。」
です。χは表の出る回数なので、自然数(=1以上の整数)で考えると、
7、8、9、10、11 … です。
問題文を見ると、表の出る最小の回数を求めるので 7 回が正解です。
正解:7(イ=7)
03/03
まとめ
ここまで、不等式の文章問題をLv1~Lv5まで5段階のステップで進んできましたが、問題の解き方の本質は同じです。問題文の条件を不等式で表して、解を求め、解の意味を正しく解釈して、正解を出すという流れになります。そして、複雑に見える問題ほど図式化するとわかりやすくなります。これらは、不等式の文章問題に限らず、数学の問題全般についていえることです。つまり、問題文の条件を方程式や不等式で表わして、それらを計算して解を求めるという流れは、数学の問題を解くときの基本姿勢です。