高等学校卒業程度認定試験(略称:高認・高卒認定)
高等学校卒業程度認定試験とは
高等学校卒業程度認定試験(略称:高卒認定/高認)は、高校を卒業していない方が「高校卒業と同等の学力がある」と国から認められるための国家試験です。以前は「大学入学資格検定(大検)」という名称で行われていましたが、平成17年度(2005年)から現在の制度に改められました。
この試験に合格すると、高校卒業と同じ資格が得られ、大学・短期大学・専門学校などへの受験資格が得られます。また、就職活動や各種資格試験の受験にも活用できるなど、進学・就職の幅が広がります。
高等学校卒業程度認定試験は文部科学省が実施しており、正式な英語名は Upper Secondary School Equivalency Examination(後期中等教育修了程度認定試験)です。日常的には「高卒認定」や「高認」と呼ばれることが多く、広く知られています。
高卒認定(高認)早わかり表
高卒認定試験の実施概要は次のとおりです。詳細は、このページの記事やリンクをご参照ください。
第1回 | 第2回 | |
---|---|---|
受験案内配布 | 4月上旬頃~ | 7月下旬頃~ |
出願期間 | 4月下旬頃~(1か月程度) | 9月上旬頃~(1か月程度) |
試験日 | 8月上旬~中旬(平日2日間) | 11月上旬(土日の2日間) |
合格発表 | 8月下旬~9月上旬 | 12月上旬 |
受験資格 | 受験する年の年度末(翌年の3月)までに、満16歳以上になる方。但し、すでに高卒資格を取得している方は受験できない。 | 合格要件 | 8科目~10科目(科目の選択方法による)すべてが合格または免除で満たされた場合。ただし、全科目が免除条件を満たした場合、任意の科目を最低1科目を受験する必要がある。なお、合格者が満18歳に達していないときには、満18歳の誕生日の翌日から合格者となる。 |
難易度 | 中学校~高等学校の基礎レベル (センター試験より易しい) |
|
試験方式 | マークシート方式(基本的に4~5択問題) | |
合格点 | 各科目40点程度 | |
合格率 | 約40% (一部科目合格者は8割~9割以上) |
高卒認定試験の受験資格
高等学校卒業程度認定試験(高卒認定)は、その年度の3月31日までに満16歳以上になる方であれば、誰でも受験できます。つまり、「高校1年生相当の年齢」以上であれば受験が可能です。
たとえば、2025年(令和7年)の試験を受ける場合、2026年(令和8年)3月31日までに16歳になる方が対象となります。
また、高校に在学中の方も受験できます。現在、全日制・定時制・通信制を問わず、どの高校に在籍していても受験資格があります。
ただし、すでに高校を卒業している方や、大学入学資格をすでに持っている方(大検や高卒認定にすでに合格済みの方など)は受験できません。
※旧制度の「大学入学資格検定(大検)」では、全日制高校に在学中の方は受験できませんでしたが、現在の「高卒認定」では、全日制高校に通っている方も受験可能となっています。
高卒認定試験の試験科目
高等学校卒業程度認定試験(高卒認定)は、2日間にわたって実施され、6教科・11科目から構成されています。
受験者はその中から8科目または9科目を選択して受験します。受験科目数に幅があるのは、理科の選び方によって異なるためです。
具体的には、理科の5科目のうち、どの科目をどのように選ぶかによって必要な受験科目数が変わります。
すべての科目で合格または免除の条件を満たせば、高卒認定試験に合格となります。
以下に、試験科目とその選択方法を一覧表で示します。
教科 | 試験科目 | 選択方法 |
---|---|---|
国語 | 国語 | 必須 |
地理歴史 | 地理 | 必須 |
歴史 | 必須 | |
公民 | 公共 | 必須 |
数学 | 数学 | 必須 |
理科 | 科学と人間生活 | 科学と人間基礎を含む合計2科目 または、 科学と人間生活を含まず合計3科目 |
物理基礎 | ||
化学基礎 | ||
生物基礎 | ||
地学基礎 | ||
英語 | 英語 | 必須 |
理科の受験方法と必要科目数
高卒認定試験において、合格に必要な科目数は通常8科目または9科目です。この違いは、理科の選択方法によって生じます。
理科の試験科目は、以下の5科目です:
- 科学と人間生活
- 物理基礎
- 化学基礎
- 生物基礎
- 地学基礎
受験者は、次のいずれかのパターンで理科を受験します:
- ① 科学と人間生活 + 「○○基礎」1科目 → 理科2科目受験
- ② 科学と人間生活を含まず、「○○基礎」3科目 → 理科3科目受験
この選択により、合計の受験科目数は以下のように異なります:
理科の受験方法(例) | 受験科目数 | 高卒認定試験の受験科目例 | |
---|---|---|---|
① | 科学と人間生活+生物基礎 | 8科目 | 国語、地理、歴史、公共、数学、英語、科学と人間生活、生物基礎 |
② | 物理基礎・化学基礎・地学基礎 | 9科目 | 国語、地理、歴史、公共、数学、英語、物理基礎、化学基礎、地学基礎 |
どちらのパターンでも、すべての受験科目で合格または免除を満たすことで高卒認定試験に合格できます。
高卒認定試験の合格要件
高卒認定試験では、8科目または9科目(理科の選択方法により異なる)すべてにおいて、合格または免除の条件を満たすと、高卒認定試験の合格者となります。
ただし、満18歳未満の方が合格した場合、正式に「合格者」と認定されるのは、満18歳に達した翌日からとなります。
一部科目合格の取り扱い
高卒認定試験では、合格した科目の有効期限は一生涯です。すべての科目に一度で合格する必要はなく、複数回に分けて合格を目指すことができます。
たとえば、第1回の試験で全科目を受験し、不合格だった科目のみを第2回試験で再受験する方法や、毎年少しずつ科目を受験して数年かけて合格を目指す方法も可能です。
合格科目は高校の卒業単位に加算可能
高卒認定試験で合格した科目は、高校在学中であっても、学校長の判断により「単位認定(卒業単位として加算)」される場合があります。これは、高卒認定試験の合格が、学習成果として正式に評価される制度によるものです。
この仕組みは特に、以下のようなケースで活用されています。
- 通信制高校で卒業に必要な単位を補う場合
- 高校を長期欠席しており、進級や卒業が難しくなりそうな場合
- 一度退学した高校に再入学した際の単位として認定されるケース
ただし、単位認定の可否や扱いは学校ごとに異なるため、在籍校に必ず確認するようにしましょう。
免除制度
高等学校卒業程度認定試験(通称:高卒認定、または高認)には、一部の試験科目の受験が免除される制度があります。
これは、過去に高校などで単位を修得していたり、英検・数検・歴史検定など所定の技能検定に合格している場合に、受験願書を提出する際、申請によって該当科目の試験が免除されるという制度です。
この制度を活用すれば、受験すべき科目数を減らすことができるため、合格までの負担が軽減されます。
以下のような方は、免除制度の対象となる可能性があります:
- 高校に1年以上在籍し、単位を修得していた方
- 高等専門学校(5年制)に1年以上在籍し、単位を修得していた方
- 英語検定(英検)、数学検定(数検)、歴史能力検定(歴検)などで、所定の級以上に合格している方
- 以前の「大学入学資格検定(大検)」や過去の高卒認定で一部科目に合格している方
- 文部科学省が認可した高等専修学校(高等課程)に1年以上在籍していた方
試験科目 | 実施団体 | 技能検定の名称 免除に相当する級 |
---|---|---|
歴史 | 歴史能力検定協会 (03-5913-6407) | 歴史能力検定 世界史1級~3級のいずれか 及び日本史1級~3級のいずれか ※世界史と日本史の両方必要 |
数学 | 公益財団法人 日本数学検定協会 (03-5660-4804) | 実用数学技能検定 1級、準1級又は2級 |
英語 | 公益財団法人 日本英語検定協会 (03-3266-8311) | 実用英語技能検定 1級、準1級、2級又は準2級 |
英語 | 公益財団法人 全国商業高等学校 協会 (03-3357-7911) | 英語検定試験 1級又は2級 |
英語 | 公益財団法人 日本国際連合協会 (03-3517-6490) | 国際連合公用語英語検定試験 特A級、A級、B級又はC級 |
※英語は上記の3つのうち、いずれか1つに合格していれば免除になります。
難易度・合格点・合格率
高卒認定試験の出題形式はマークシート方式で、内容は中学校〜高校1年レベルの基礎的な学力を問う問題が中心です。大学入学共通テスト(旧センター試験)に比べて難易度はやや低く、基礎重視の試験といえます。
合格点は、各科目100点満点中、概ね40点以上が目安です。ただし、合格点は年度や科目により若干変動するため、各科目50点以上を目指して勉強するのが安全です。
「高卒認定は難しい」と言われることもありますが、それは科目数が多いためであり、1科目ごとの難易度はそれほど高くありません。計画的に学習すれば、十分に合格が狙える試験です。
以下のグラフは、高卒認定試験の合格率の推移を示したものです。ここ数年の全科目合格率はおおむね40%前後で安定しています。

全科目合格率はほぼ4割で推移している
また、一部科目でも合格している受験者の割合(一部科目合格率)は80%を超えており、多くの方が何らかの科目で合格を勝ち取っています。
つまり、しっかり対策を立てて取り組めば、合格は十分に目指せる試験です。特に苦手科目を除外して得意科目から受験するなど、柔軟な戦略も可能です。
合格時の学歴
高等学校卒業程度認定試験(高卒認定)に合格すると、高等学校を卒業した人と同等以上の学力があることが国によって認定されます。
これにより、次のような進学・就職などの機会が開かれます:
- 大学・短期大学・専門学校の受験資格
- 高卒を受験条件とする国家資格・各種資格試験
- 高卒を条件とするアルバイト・就職活動への応募資格
つまり、高卒認定試験の合格は、「高校卒業」と同等の扱いで様々な場面で活用することができます。
一方で、履歴書に「高卒認定合格」をどこに記入するべきか迷う方も多いようです。高卒認定は学歴ではなく「資格」に分類されるものですが、通常の資格試験とは異なり、高卒相当の学歴を証明する性格を持つため、学歴欄に記載するのが一般的です。
記載例は以下のようになります:
〔学歴欄〕
◯年3月 ◯◯中学校卒業
◯年4月 ◯◯高等学校入学
◯年9月 ◯◯高等学校中途退学
◯年12月 高等学校卒業程度認定試験 合格
◯年4月 ◯◯大学 ◯◯学部 入学
障害等をお持ちの方への特別措置
身体上の障害等をお持ちの方は、特別措置として、別室受験や個室受験をすることができます。出願時に「高等学校卒業程度認定試験身体障害者等受験特別措置申請書」と「医師の診断書」を提出し、審査の上、特別措置が決定されます。対象となる障害は「視覚障害」、「聴覚障害」、「肢体不自由」、「病弱」、「その他(精神疾患等)」です。
高卒認定試験の受験料
高卒認定試験の受験料は受験科目数により異なります。受験料は収入印紙を願書に添付します。
受験科目数 | 受験料 |
---|---|
7科目以上 | 8,500円 |
4科目以上6科目以下 | 6,500円 |
3科目以下 | 4,500円 |
高卒認定試験受験のメリット
合格科目は高等学校の卒業要件になる
高卒認定試験の合格科目が卒業単位として認められ、学校長の判断により高校の卒業要件として扱われます。長期欠席等で進級や卒業が難しい状況にある方にとっては特に大きなメリットになります。さらに、通信制高校の卒業単位にも加算することもできます。
何度でもチャレンジできる
高卒認定試験では、科目ごとの得点によって合否が決まります。一度合格した科目は一生涯有効であり、次回以降の試験では合格済みの科目を免除申請することができます。つまり、自分のペースで合格を目指すことができます。
進学や資格取得、就職にも活用できる
高卒認定試験の合格は、大学や短期大学、専門学校への進学だけでなく、国家試験の受験や就職活動にも有効です。高卒認定試験は、あなたの将来の可能性を広げるための一つの道となります。
参考書と問題集
高卒認定試験対策の学習書として、どれを選べばよいのか迷われる方も多いと思います。大学受験用を選んだ場合は、レベルが高い上に、高認対策としては必要以上の内容が含まれているため、効率よく学習できません。高認対策用として適している学習書は、薄めで基本的な内容が適度な量で解説されている学習参考書が理想的ですが、高認対策専門の参考書や過去問題集が最適です。
高卒認定ワークブック

高卒認定試験の出題傾向・形式・レベルに合った学習内容なので勉強して無駄になる内容はなく、効率的に基礎から確実に実力をつけることができます。内容は問題が中心。高認に特化した学習書なので、本試験でもワークブックの類似問題が多く出題されています。また、要点整理がなされており、解説も一問ずつ丁寧に説明されています。高卒認定試験対策に最適な参考書的な問題集です。
高卒認定過去問題集

高卒認定/高認の合格の秘訣は、過去問にあるといわれます。それは、本試験で毎回同じような出題形式で、しかも、過去の出題の類似問題も少なくないからです。過去問を解くことにより、高認のレベルを知ることができますし、そのまま得点に直結するような効果的な対策学習ができます。過去問題集の中でも「スーパー実戦過去問題集」は過去問題6回分、秋試験も掲載!市販されている問題集の中で最も多くの過去問が掲載されています。8月試験だけでなく、11月実施分の問題まで収録されている過去問題集は他にありません。解答解説は、基本事項にも触れながら丁寧に説明。価格は少々高めですが、自信をもっておすすめできる過去問題集です。
通信講座
高卒認定試験は、科目ごとに出題内容と出題形式がほぼ決まっています。そのため、高校の教科書をはじめから丁寧に勉強しなくても、それぞれの科目を要領よく勉強すれば、短期間で合格に必要な学力を養うことができます。通信講座では、各科目の出題傾向等を考慮して教材が作成されています。受講料も必要最小限におさえられています。特に不得意科目・苦手科目を受講しておくと合格可能性が飛躍的に向上します。
※なお、通信講座で学習していた関わらず、試験で合格できなかった科目は、合格するまで受講料が無料になる合格保証制度が用意されています。